「あ!」





声を上げた少女は俺の目の前にしゃがみ込み、クリーム色の砂浜に手を伸ばす。





「ワルター、見て!」
「?」
「小さな貝がある!」





は手に持っている貝をこちらに向け、「ほら」と言った。
親指と人差し指につままれた貝殻は本当に小さく、ほんのりと桜色。
女子供が見つけてはしゃぐ対象としては上出来だ。





「…良かったな」
「ピアスにしたらどうかな?」
「さあな」
「ちょっと…何でそんな素っ気ない訳?」
「俺には関係のない事だ」
「関係あるよ!」





大声を上げるに不愉快だと言わんばかりに目を細めれば、も負けじと眉を顰めた。
しばらくの無言が続いた後、はスッと手を上げる。
感情が昂ったのか、俺の肩でも叩くつもりなのだろう。
それで機嫌が直るならば付き合ってやろうと目を閉じるが
いつまで経っても来るはずの衝撃を感じない。
何が起きているのかと目を開ければ、の手は俺の耳へと伸びていた。





「…ほら、似合う」





手の中にあるのは先程の小さな貝殻。
はそれを俺の耳に当て「似合う」と言った。
…幻覚と幻聴だろうか、何だか思っていた話と違う。





「…俺が付けるのか?」
「そうだよ?だって私穴開けてないし」
「…」
「だから関係あるって言ったじゃん」





さも当たり前と言わんばかりには言った。
てっきり自分の物にしようと考えているのかと思ったが
どうやらは俺の事を考えていたらしい。
…何だ、このむず痒くなる感覚は。





「じゃ、もう一つ探そうか!」





この広大な砂浜から貝殻を見つけるなんて、それだけで一日が潰れてしまうだろう。
それなのには全く苦じゃないと言わんばかりにしゃがみ手を動かす。
こちらが頼んでもいないのに、だ。





「…三つだ」
「へ?」
「三つ探すぞ」





振り返るの顔を見れず体を反らす。
そして逃げるよう、俺は砂浜に視線を落とした。





「何で?」
「…穴が無くても加工次第では付けられるだろう」
「…」
「俺が付けるならお前も付けろ…お前だって、似合う」





察しの悪いに俺の気持ちは伝わっただろうか。
そう思いチラリと相手を盗み見れば、はぽかんと口を開け阿呆面を晒していた。

言葉の意味が分かったと同時、その頬を貝殻と同じ桜色にすると
小さく、本当に小さく頷きは口元を手で覆い顔を隠す。

そんなを愛しく感じ、ソッと近寄り手を伸ばした。
重ねたの手は思った以上に熱く、ああ、自分の熱さを誤魔化すには丁度良いと
その桜色に染まる頬に唇を落とした。





春を喰らう










16/02/16