「チャバって、周りからロリコンって言われる?」
「ッ!?」





飲んでいた茶を戻し噎せるチャバを、はジッと見つめる。
雨の降る、湿気の多いとある日の午後だった。





「な、何言ってるの…!?」
「んー…そう言われてもおかしくないのかなって」
「そんな…オイラとちゃんは四つしか違わないのに」
「…四つって意外と遠いよ」





チャバは二十歳、は十六歳。
チャバの言う通り、二人の歳は四つ程離れている。

犯罪、とまではいかないし今のご時世四つ程度の年齢差は何の障害にもならない。
…本人達が気にしていなければ、と言う前提があればだが。





「そんな事、言われた事ないよ」
「…」
「…ただ、気にならないって言うのは嘘かもね」





息を吐き頬を掻くチャバは、黙るに向けて語り続ける。





「たまに考えるんだ…もしちゃんがオイラと同い年だったらって」
「…」
「一緒にお酒を呑んだり、夜まで…ううん、もっとずっと一緒にいる事が出来る」
「……」
「…でも、それをオイラ以上に気にしているのはちゃんだよね?」





チャバの問いかけには言葉を詰まらせる。
何も言い返せなかったのだ、チャバの言っている事が図星であったから。





「待つよ…後四年」





スカートを握り締めるその手を取り、チャバはの体を引き寄せる。
は目を見開きながらも温かなぬくもりに身を預けた。





「四年経てばちゃんも二十歳だ、何も気にしなくて済む」
「…」
「周りに何を言われても関係ない…オイラ達の自由だ」
「チャバ…」
「好きな事をしよう…オイラとちゃん二人で」





そう言ってチャバは小指を突き出した。

「約束」と言った彼の笑顔に嘘偽りはない。
四年と言う長い月日が空いても、この人ならば約束を守ってくれる。
そう、もチャバを信じて小指を絡めた。










「なのにさあ…!」
「ははは…」





あれから四年。
チャバは二十四歳となり、は成人を迎えた。
大人らしい容姿になったかどうかは別とし、約束の年になったのだ。

だがどうにも状況はあの時から変わっていない。
いつまで経ってもチャバはの事を良く言えば大切に扱い、悪く言えば子供扱いをする。
その事に関し、は声を荒げ怒りを露にしていた。





「私もう二十歳だよ?お酒も呑めるし、夜更かしも出来る!」
「そ、そうだね…」
「それなのに、チャバはいつまで経っても子供扱い!」
「あの、ちゃ―――…」
「いつまで経っても“ちゃん”付け!!」





手を振り上げ怒るを前に、チャバは困ったような笑みを浮かべ「ごめん」と言う。
思ってもいない謝罪には更に機嫌を悪くし、その頬を膨らませた。





「…本当、何も変わってない」
「…」
「やっとあの頃のチャバに追いつけたのに、チャバはまた四年先を行ってる…」
「…ごめんね」





震えた手でスカートを握るの姿は十六の時と変わらない。
チャバは目を細め震える少女を見つめた。





「…悪くないよ」
「…」
「悪くないけど、私も連れてって」





「チャバが見ている世界まで、連れてってよ」





潤んだ瞳で自らを見つめるの姿に、チャバは息を呑む。
愛らしいとは違う、別の魅力を感じたのだ。

その体を引き寄せ、唇を重ねる。
息と共に漏れ出したの声は驚きながらも彼を受け入れた。
そのまま体を押し倒し、逃走路を塞ぎ、僅かな隙間に舌を滑り込ませる。
は目を見開き、突然の事に体を大袈裟な程に跳ねらせた。

長い事続いた深いキスも終わり、ゆっくりと唇が離れる。
濡れた瞳を見て「綺麗だ」と感嘆の息を漏らしたチャバはの頬にそっと手を伸ばした。





「…
「…」
「…」
「チャバ…」
…ちゃん」





期待に満ちた瞳からスウッと光が消えていく。
しまった、とチャバは彼女の体から手を離した。





「ち、違うんだ…!今のはクセで…!」
「…」
「そもそもオイラのちゃん付けは子供扱いしている訳じゃ…!」
「良いよ、もう」





必要以上に慌てるチャバに溜め息を吐き、はゆっくりと体を起こす。
女々しくて幻滅されてしまっただろうか、と不安になるチャバを真っ直ぐと見
は年相応の笑みを浮かべ言葉を紡いだ。





「チャバが見ている世界、私にも見えた気がした」
「、え…」
「何か、すっごく温かい未来が見えたよ」





「私きっと、お婆ちゃんになっても“ちゃん”って呼ばれているんだろうな」、
照れながらも幸せそうに笑うの姿にチャバは目を丸くする。





「このまま、離さないでね」

「私も、チャバが好きな事だけは変わらないから」





先程まで敬称に文句をつけていたが今は自分に向かい微笑んでいる。
女心と秋の空、とは言うもののの心情は変わりすぎだ、とチャバは内心文句を垂らした。

でも、悪い気がしないのはどうしてだろう。
そんなもの、考えなくともチャバには理解出来ていた。





「…うん、ずっと好きだよ」

「これからも何も変わらない」

「オイラは、ずっとちゃんの事が好きだから」





そう言って再び唇を重ねる。
は微笑み、四年前と変わらずその身を委ねた。

チャバの胸の中、は「ふへへ」と気の抜けた笑い声を上げる。
大人ぶろうとも媚びようともしない、いつもと変わらない彼女だ。

チャバはそんな彼女を強く抱き締め、その髪に唇を落とした。
この幸せは、自分が死ぬまで…いや、死んでも絶対に離すものかと。





kiss the future

(…で、続きは?)
(か、変わらなくて良いって言ったじゃん…!)










14/03/23