「んー疲れた!ちょっと休憩!」





墓地を歩く私は何の遠慮もなく墓石の上に腰掛ける。
罰当たりな、と文句を言う人間は誰一人としていないはずだ。

なんせ、墓石に刻まれた名を持つ人は今目の前にいるんだから。





「おい!俺の墓に座るなよ!」
「別に良いじゃん!生きてるんだから!」
「だー!そうじゃねぇだろ!」
「悔しかったらどかしてみろー!」





笑いながら墓石を叩けば、目の前の男は声を荒げ地団駄を踏む。
一回り以上違うであろう男の反応とは思えないくらい彼は幼い。

…と思えば冗談を言い笑う私を真剣な瞳で見つめる。
先程の幼い顔とは違う、年相応の表情だ。





「なあ、アンタ本当に破壊の少女か?ただの悪ガキにしか見えないんだが」





いつもの口調なのに冗談じゃない。
なんだか彼らしくなく気味が悪かった。





「そうだけど…」
「…嫌か?」
「…まあ、ちょっとだけ」





気が付いたら既に相手のペースだ。
何故だか私まで真剣に答えている。





「差別も噂話も嫌だし、いらない力まで手に入っちゃうし…」





勿論、良い事もある。
だけどそれと比べて辛い事が多いのは確かだ。





「…なあ」
「?」
「その役、俺にくんない?」
「…は?」





ズイ、と近寄る整った顔に少しばかりときめいた。
だけど相変わらず口に出している事は意味不明だ。





「だから、その破壊の少女っつー役、俺にくれって!」

「主役よりも確実に目立つだろ?つまり俺が目立つって事だろ?な?」





分かりやすく説明しているつもりなのだろうか。
常人には理解出来ない言葉の数々を前に、まず浮かんだ気持ちは“呆れた”だった。





「…嫌だ」
「なっ…どうしてだよ!」
「自分が目立ちたいからって…スヴェン最低」





「もっとこう、一人の女の子の為に
 “俺が嫌なもの全部背負ってやる!”とか言うんだったら分かるのに…」





乙女心の“お”の字も分からず過ごしてきたのが手に取って分かる。
本当、何で私こんな奴と一緒にいるんだろう。





「…ふーん」





ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる男は顎に手を当て私を舐め回すように見つめた。
不審な行動に眉を顰め小首を傾げる。





「お前、俺にそんな事言われたいの?」





更にズイ、と近寄る顔を避けようと身を捩れば、男の手はそれを阻止する。
ハッと気付いた時には遅く、逃げ場は何処にもなくなっていた。





「良いぜ良いぜ、言っちゃうよ?何なら名前付きで言ってやろうか?」

「俺がお前の嫌なもの、代わりに全部受け止めてやるよ…なあ、―――…」





鈍い音と共に「死んじまえ!!」が響くとある日の午後、蒼穹の空。










10.蒼穹(ソウキュウ)青空/大空
スヴェンキュンキュン…!
修正:14/01/29