|
「セネル―!起きろー!」 「…」 「ほら、ご飯出来たよ!」 もぞもぞ動くその体から勢いよく布団を剥がす。 「…はよ」 「おはよ!早く行こ!」 まだ眠いと訴える視線を華麗にスルーし、暖かい彼の手を取る。 気が付けばこうして家主であるセネルを起こすのが私の日課になっていた。 「…美味い」 「当たり前だよ!私が作ったんだから!」 鼻を鳴らし胸を張る私を見てセネルはクスリと笑う。 何だか彼にしては淑やかな笑顔だ。 「そうだな…お前が作ったものを毎日食べれるなんて幸せだよ」 「…」 「俺、これがあるから毎日頑張ろうって思えるんだ」 「…?」 何かがおかしい。 今までこんなに爽やかな朝を迎えた事があっただろうか。 「…セネル」 「ん?」 「いつもみたいに『ああ』とか『はあ』とか適当に返事しないの…?」 「いつもみたいって…いつもこうだろ」 何を言っているんだろう。 セネルが低血圧で朝の反応が悪い事を一番知っているのは私なのに。 「…それ、演技だよね」 ジトッとした瞳で見つめれば、セネルの口角がヒクリと動く。 笑顔の仮面が剥がれた瞬間だった。 「…ッチ」 「舌打ちとかすんな!」 「が腹黒いって言うから方向性を変えたんだ」 「その考えが既に腹黒いんだよ…優しすぎて鳥肌立った」 「それは言い過ぎだろ」 口を尖らせ拗ねたかと思えば、セネルはテーブルに肘を付き笑顔を見せる。 嘘偽りのない、彼らしい笑顔だ。 「でも、言った事は全部本当だから」 碧色の瞳がゆっくりと細くなる。 陽の光を受けキラキラと輝く髪に魅了された私は、言葉を返すのも忘れていた。 「が俺だけの為に作る料理が好きなんだ」 「美味かろうか不味かろうが、そう言うのが朝の始まりって…何か良いよな」 そして次には子犬のように無邪気に笑うから 私はいつもアンタが澄んでいるのか淀んでいるのか分からなくなる。 でも、心が温かいのは幸せな証拠だろう。 13.清水(シミズ)地中や岩の間から湧き出る澄み切った水 黒か、天然か 修正:14/01/29 |