ソファで新聞を読むウィルの膝へと座る。
ウィルの存在に気付かなかった訳ではない、故意だ。





「…邪魔だぞ」
「えー」
「えー、じゃない…暑いから離れろ」
「私は逆に寒いくらいなんだけどなあ」
「なら部屋の温度を上げるか?」
「上げても良いけど離れないよ?」





ウィルは目を見開いた後溜め息を吐くと、読み途中の新聞をラックへ入れる。
どうやら私を引き剥がす事を諦めたようだ。





「今日は随分しつこいな…」
「いつもしつこいけどね!」
「褒められた事ではないぞ」
「褒めてもらいたくて父親に何かする歳じゃないもん」





口を尖らせる私を見てウィルは困ったように眉を下げる。
ここ最近、私はこの表情を見るのがクセになっていた。





「…きっと反抗期なんだ」
「何?」
「ウィルの困った顔を見ると、ちょっと楽しいんだ」
「…それは随分過激だな」
「私もそう思う!」





アハハと笑ってみせれば、ウィルも眉を下げたまま笑う。
もう一度零した彼の溜め息には、彼なりの愛が詰まっている気がした。





「反抗期の子供が父親に抱きつく訳ないだろう」
「でも、ウィルの言う事に全部反抗してるよ?」
「ああ…確かに」





なるほど、と頷くウィルの仕草が何だか可愛らしく見えた。

欲望のままその首に腕を回し、膝を跨いで彼と向き合いグッと距離を近付ける。
視界の端に映るウィルの耳は真っ赤で、重なる心臓から聞こえる鼓動は酷く早い。





「お、おい!良い加減にしろ…!」
「もうちょっと…」
「ま、待て…!この状況で寝るなよ!?」
「分かってる…分かって…る…」





と声を発した時には既に眠りへ堕ちていた。

ウィルの近くは凄く落ち着く。

優しい表情も、困った表情も、怒っている表情も、照れた表情も、
今感じているぬくもりも、全部が心のオアシスなんだ。

だから私はオアシスに辿り着く為なら、どんな手でも使うんだよ。










16.泉水(センスイ)泉、湧き水/庭園につくられた池
泉=オアシス
修正:14/01/29