冷たい風が吹く。
赤く染まった黒い髪が微かに揺れた。

血の海に浮かぶ愛しい少女。

治癒のブレスをかける事も出来なければ道具もない。
成す術のない僕は浅い息を繰り返す少女の横に屈んだ。





「…早く死んじゃってくださいよ。僕も暇じゃないんですから」
「仕事?大変だね…」
「貴女とは違うんですよ」





早く死ねだなんて、そんなの嘘だ。
ただいつも通り接した方が安らかに逝けるだろうと思っただけ。





「生まれ変わったらラッコが良いなあ…」
「…」
「そこらへんで彷徨ってたら、拾ってね…?」
「…生まれ変わっても方向音痴なんですね」
「うん…それで体力もないし、その割には食欲旺盛かな…」
「…さんらしいですね」





もうこの人は永くない。
幼い頃常に死を見てきた自分には良く分かる。

きっと彼女自身もそれを感じているのだろう。
だから生まれ変わった後の話に想いを馳せているのだ。





「ジェイ、今までありがとう…ラッコになってもよろしくね」
「…」
「種族を超えた愛も、良いと思わない…?」
「ッ…!」





良い訳がない。

溢れかけた言葉を呑み込み、齧り付くようなキスをした。

ほとんど動かない相手の舌に自らの舌を絡める。
口の中に広がる鉄の味は割と悪くないと思えた。

彼女には最期まで僕を感じていてほしくて
吐息を混ぜながらその胸へ苦無を突き刺す。

さんは最期まで変わらず笑顔を浮かべ
「ありがとう」と言って目を閉じた。

彼女が来世を願うのであれば、僕はその時をひたすら待とう。

もし再び出会う事が出来るのであれば、
次こそは不幸へと突き落とす青い糸ではなく、赤い糸で結ばれる事を信じて―――…。










18.青糸(セイシ)青い糸/たづな/黒髪のたとえ/柳など細く青々した枝のたとえ
うちの子に限って、死因が食中毒かもとか考えてました雰囲気ぶち壊し
修正:14/01/29