道具屋で珍しい宝玉を見つけた。
陽に透けると蒼く光る、とても綺麗な玉だ。





「海みたい…」





机の上でコロコロと動かし続け、もう何分経っただろう。
次第に愛着がわいてきた…生きていると錯覚するくらいに。





「名前をつけるなら、ステラかな!」





ふへ、と笑う私の周りに人がいなくて良かった。
もしいたら末期だと私を蔑んでいたに違いない。





「セネルにあげよう!」





名前をつけてしまった手前落として壊すなんて事はしたくない。
ならば一番大事にしてくれる人に譲ろうと、私は立ち上がり外へと飛び出した。










「セネル!」
…どうかしたか?」
「これ、あげる!」





彼の家の前、私はハンカチに包んだ宝玉を差し出し笑った。





「綺麗だな…どうしたんだこれ?」
「お店で買ったんだ!何となくステラに似てると思わない?」
「…ステラに?」
「うん、見てると凄く落ち着くんだ…だから、セネルにあげる!」





セネルは複雑な表情を浮かべながらも宝玉を受け取る。
私はそんな彼の心情を分かったつもりになって微笑みを見せた。





「もうステラはいないけど…この子を代わりだと思って大切にしてね」
「…」
「ステラはずっと、セネルの傍にいてくれるから」





「だって、それが新しいステラだもん」





セネルは「そうだな」と言って優しく笑う。
彼の返事に満足した私は一つ頷き、手を振り背を向けて歩き出した。










無意識の内に込めていた力のせいで握る宝玉にヒビが入る。
パキ、と微かな音が鳴ったと同時、自らの中でも何かが弾けた。





「ックソ…!」





叩き付けた宝玉は易々と割れ、部屋一面を蒼く染める。
欠片はライトに反射し、波のようにキラキラと輝いていた。





「俺が欲しいのはこんなんじゃない…!」





ステラが欲しい訳じゃない。
ステラの代わりが欲しい訳じゃない。

だけど本当に欲しいものは、もう手の届かない場所にいる。





「こんな事されたら、言える訳ないだろ…!」





いつまで未練がましい男を演じていなければいけないんだ。
どうしていつまでも言うタイミングを与えてくれないんだ。





「お前が…ッが欲しいのに…!」










3.碧玉(ヘキギョク)青色の美しい玉/青天・清水などのたとえ
黒い霧のセネル
修正:14/01/29