夏の夜。
パジャマがビッショリと濡れる程汗を掻く暑い日に、私はある行動へ出た。





「ワルター」





眠っている彼を揺り起こす。
ワルターは微かに目を開けると、ゆったりと私の髪を触った。





「どうした?」
「輝きの泉に行きたいな」
「…今からか?」
「うん」





ワルターはそんな事かと言わんばかりに溜め息を吐く。
心配して損をした、とでも言いたそうだ。

それでもワルターは私の我儘を聞いてくれる。
重たい腰を上げ私の手を引く彼を見て、いつか恩返しをしようと密かに思った。










「ワルター!気持ち良いよ!」
「…」
「ワルターも入ろうよ!」
「お前のせいで寝不足だ…帰る時になったら起こせ」





「一人で遊んでいろ」、と続けたワルターは
「起こせ」と言う言葉通り幹へと寄り掛かり目を閉じた。





「ワルターと入りたかったのに…」





なんて私の声も勿論聞こえていない。

一人虚しくなった私は、五分も経たずに泉から上がった。
眠る彼の髪をソッと撫でれば、撫でた部分だけが蒼くなる。





「…楽しい」





新しい遊びを見つけた私は夢中で彼の髪を撫でた。
まるで絵の具で絵を描いているみたいだ。





「…なら、次来た時も寝ていて問題なさそうだな」
「う…起きてたの?」
「聞いていた」





顔を上げ、ワルターは頬を赤らめる私に意地の悪い笑みを見せる。
私はそんな彼に対しムッと眉を吊り上げ舌を出した。





「次は突き落としてでも入ってもらうから!」
「突き落としてでも、か…俺と一緒に入りたいと言っていたな」
「わああ!一体どこから聞いてるんだよ!」
「お前が勝手に言ったんだろう」





慌てる私を見てクツクツと喉を鳴らす彼は相変わらず意地悪だけど
次も泉に来たいと言う私の願いを無下にしないのは優しい証拠。

きっとワルターは無意識だろうけど、私はそんな彼の優しさが大好きなんだ。










8.青灯(セイトウ)ともしびの青い光、また灯
尻しかれ悪太
修正:14/1/29