「さてと…今日のとこはお開きかな?」
「俺は陛下の所へ報告に行く」
「分かった」
「セネルは俺の家に戻っていてくれ。何かあったら伝達係を頼みたい」





セネルは今ウィルの家に居るんだ。
口にする前にパッと目が合い、お互いにきょとんとした顔をする。





「…も来いよ」





セネルはほんの少し赤くなった頬を掻き、言葉を紡いだ。





「良いよな?ウィル」
「構わないさ。前と同じになるだけだ」





もう慣れっこ、そう言わんばかりにウィルは溜め息を吐いた。
だけど何だか嫌じゃない。





「あたし宿代出しても良いよ?どうせソファしか貸してもらえないんでしょ?」
「相変わらず失礼な奴だなお前は…」





私を気遣ってくれるノーマの横には
口の端をひくつかせているウィルがいる。

ソファだろうと何だろうと泊まらせてもらえるのは有難い。
どんなに柔らかいベッドであっても落ち着かない場所があるのも知っている。





には嫌でも我慢してもらう。今宿に止めるのは危険だ」
「店主や客に殺されかねませんしね」
「い、嫌な事言わないで…」





私を心配してくれての言葉なんだろうけど、その言葉を聞いただけでゾッとする。

数ヶ月前、水の民の里に監禁される前は
普通に宿主とも話が出来ていたんだ。

笑って私をお客さんとして迎えてくれていた人が私を殺しに来るなんて、考えたくない。
大体、あんな温厚な人がどうやって人を殺すかすら想像つかないのに。





「保安官が保護してると思わせれば狙われる確率も多少は下がるだろう」





保護って言葉がどうも引っかかるけど、敢えて突っ込まない事にしよう。

皆私を思ってやってくれてる事なんだ。
文句は言えない。





「じゃあ、ワルターも一緒に!」
「ああ、問題ない」
「良かったねワルター!」
「お前と共に行動するのは当たり前だ」





正直、今の状態でワルターと離れてしまうのは心配だ。

一応、旅を許してもらえたのはワルターのお陰でもあるし、
逆を言えばワルターがいなければまた里に戻らなければいけないかもしれない。

それに、今の皆が私の理想だったんだ。
たった一人でも欠けてしまうのは嫌だ。





「…何が当たり前なんだよ」
「目を離さぬようを見張るのが俺の役目だ」





…こんな些細な喧嘩を繰り広げるのは、理想ではないけど。





「アンタ等はいつ仲良くなるわけ…?」
「こいつが少しは素直になったらな」
「それはこっちの台詞だ」
「あーもう!ストップストップ!とにかくウィルの家行くよ!」





今にも拳で語り合いそうな二人の背中をぐいぐいと押し、制止の声も聞かぬ振りをした。





「…問題児がまた増えましたね」
「……まあ、どうにかなるさ」





ジェイの“また”と言う言葉はかなり引っ掛かるけど
今は目の前の二人を早く離して寝かせようと足を動かす。





バイバ〜イ!」
「うん、またねー!」
「少し早いけどおやすみなさい」
「あぁ、おやすみ、シャーリィ」





各々挨拶を適度に済まして、寝床に着く。

もう離れる事に寂しさを感じる事はない。
また明日会える、たったそれだけでワクワクが増えて笑顔になる。

明日はどんな事が起きて、どんな事に声を上げて。
そしてどんな事に落胆して、どんな事で励まし合うのだろう。

仲間がいる、旅が出来る、空が見れる。
それだけで私の心は、思った以上に晴れやかになった。










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修正:14/01/01