目を覚ますと、偽物の空もすっかり暗くなっていた。
パチパチと音を鳴らす焚き火を囲み
仲間達は今日の総括と今後の事についての話し合いを始める。
「地上の様子が分かりました」
先程までキュッポ達と話していたジェイが仲間達の輪に加わる。
皆はジェイの次の言葉を待つよう、真剣な瞳を向けていた。
私はと言うと、例の分厚い本を手に取り必死に文字を追っていた。
今起きている地上の説明など、耳に入らない程真剣に。
「今の所、戦争は始まっていないようです」
「そうか…」
「街の外はカカシ部隊に包囲されているものの、それ以上の動きはないとの事です」
的確に訳す事は出来ない。
だけど声で聞いた後にもう一度見て訳すとなると話は違う。
一個一個単語を読み解いていけば、蘇るのは火のモニュメントで見たあの光景。
「…間違いじゃない」
あの暗闇の中呟かれていた言葉と、ほぼ同じ。
初めて見る英単語も聞いた言葉で埋めてみれば驚くくらいに文章が繋がっていく。
でも解読出来たのはたったの数ページ。
この本に書いてある事全てを知るには、後何回変な光に触れ映像を見なければいけないのか。
全体の半分、その半分、またその半分も読み解けていない本をバタンと閉じ
私は小さく溜め息を吐いた。
早く知りたい。
自分の知らない、何かを。
「さん、話し合いにはちゃんと参加して下さい」
「聞いてる…ちゃんと聞いてるよ…」
「?」
本を閉じた瞬間、またドッと疲れが押し寄せる。
ここに来てから、体が常に不調を訴えている。
頭は痛いし、疲労は溜まりやすいし、視界までもぼやけて見える。
やった事と言えばモニュメントに行って、映像を見て、ゲートと戦って、ここに戻ってきただけ。
別に長距離を歩いた訳でもないし戦いも皆と一緒だから辛くない。
ブレスだって全然使ってないし、怪我を負った訳でもないんだ。
でも、何か違う。
見えないプレッシャーとか、殺意とか、何だかそんなものをうっすらとだけ感じてる。
それもとても、近くから。
「僕達が目にしたのは、元創王国が誕生した時の様子でしょう」
「あの白くて四角い物体が遺跡船の母体ってこと…?」
「僕達がいるここが、まさにその場所なんでしょうね」
「おそらく、あれも船なのだろうな…」
「どうやったらあんな事が出来るのだろう…」
「やっぱり、メルネスの力か?」
「可能性は高いです」
「光跡翼というのも、新しいキーワードだな」
「何だか分からない事ばかりだな…」
「…」
座っている事すらままならない眠気と疲労感。
近くにいるはずの皆の声が、遠く聞こえる。
「それにしても、煌髪人も物好きですね」
ジェイの声が聞こえる。
考察するとは違う、感想に近い声色だ。
「新天地を求めるにしたって、陸ごと作るのはやりすぎじゃないかと」
「…水の民だって好きでわざわざやったわけじゃないだろ」
「それを捨てる程の理由があったという訳か…」
「…その通りだとしたら、一体何があったんでしょうか」
あ、駄目。
もう限界。
やはり鍛え方が違うのか。
皆のへっちゃらな姿を見ていると、もうそうとしか考えられない。
やっぱりもっと体を鍛えないと…と思いつつも、意識は遠のき
私は抗う事なく、そのまま砂浜へと倒れこんだ。
「…また、頭の中に映像が…」
「…今見えた場所に行けという事か」
「…僕達は誰かに導かれている…僕達の傍にいる、誰かに…」
沈黙が流れる。
頬を掠める風が煩いと感じる、長い沈黙だった。
「しばらく様子を見る事にしましょう」
「ああ、今日は遅いから出発は明朝だな」
「さん、もう寝てもいいですよ…って…」
「既に寝てるな」
砂が髪につくのも、口に入りそうなのも全く気にならない。
ただ波の音を子守唄に深い深い闇へと堕ちていく。
体が重く、酷く疲れているのは確かだけど
波の音を聞いていると良い夢を見れそうだと思うくらい心が休まる。
私は明朝まで規則的な寝息を立てながら、ゆったりと夢の世界を彷徨った。
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修正:11/12/12